私が彼に何を聞きたいかなんて、お見通しなのね。

「あれは……一体、何なの?」

「悪魔の紋様だ。上級の悪魔とでも、契約したんだろう」

「契約?」

 眉を寄せた。マティアスが、悪魔と契約なんて……何があったの?

「悪魔は欲しい物と交換に、その者の命を手に入れる。あの騎士が欲しがった何かは、何だと思う?」

「マティアスが……」

 私が考え込み、俯いている間に魔法使いは消えた。

 開いていた窓も、しっかりと閉められている。

 まるで、最初から誰もいなかったように……最初から何もなかったように。


◇◆◇


 私は壁にかけてある時計を、じっと睨んでいた。

 約束の時間を過ぎても、マティアスが来ない。

 お見舞いに来たいと書いてくれていたので私も返事をして、本日来てもらえることになった。

 お見舞いに来てもらうとは言っても、かなり良くなった私も寝込んでいる訳でもなくて、薄いけれど顔色が良く見えるように化粧もしていた。

 これ以上、マティアスに心配をかけたくなかったからだ。

 十五分を過ぎても、扉を叩く音はしないし、彼の音ズレを知らせる執事も来ない。