でも、もしそうならば、確かめたかった。

 急に冷たくなった人。もし……何か原因があったとしたら?

 マティアスの首を取り巻く黒い紋様、絶対に何かあったんだと思ってしまった。

 呪術などそういった何かに思えた。

 私だけでは判断がつかない。誰かに相談したい。

 ……でも、誰に?

 私の事情を知っていて、禍々しい紋様の正体を知っていそうなのは……。

「魔法使い?」

「お呼びかな。ご令嬢」

 私は声が聞こえた方向へと、窓際に目を向けた。

 黒いローブを目深に被った、魔法使い。

 ついさっきまで閉まっていたはずの窓は、今は大きく開いていて、季節柄、寒いはずなのに、私は冷たい空気は感じない。

 不思議だけど、彼の使った魔法だろう。

 何故ここにいるのか、彼には色々聞きたいことはあったけれど、一番聞きたいことを聞いた。

「……何か知っているの?」

 私の疑問を聞いて、口元だけ見える彼は微笑んだ。

「何か、というと?」

「マティアスのことを……知っているの?」

「いちいち乙女の失恋した相手のことなど覚えてもいないが、あの紋様のことならば知っている」