そのまま、大騒ぎになっている現場を後にして家へと戻され、私は即ベッドへと入り、出来るだけ冷えた体を温めて寝たんだけど、高熱で数日寝込んでしまった。

 代わる代わる見舞ってくれる気配がしたけれど、声は曖昧に聞こえ、目を開けられる時と開けられない時もあった。

 誰が来ているかは判然とせず、熱に浮かされ、ただただ、眠り続けた。

 夜中に目覚めた時には、ようやく意識ははっきりしていた。

 なんだかとても悪い夢を見ていたような、妙な居心地の悪さを感じて、はあっと大きくため息を吐いた。

「あ。マティアス……」

 兄の成功で新調して貰った天蓋付きのベッド隣に置いてある引き出しの上に、手紙の束があった。

 寝込んでいる間に、私宛に届いた手紙だろう。

 私はそれを取ると、彼の名前を探す。一通の手紙に目が留まった。マティアスからだ。
 慌てて手紙を開けると、体調を心配している言葉が、延々書かれていて、最後に会いたいと一言。

 私を想って心配してくれる気持ちに溢れていて……なんだか、泣き出しそうになった。

 勘違いかもしれない。あんなにもあっさりと、私を捨てた人なのに。