けれど、私を攫った犯人は、ビクともしなかった。

 街はずれまで来たところで、なんだか違和感を覚えた。

 ……蹄の音が、複数に重なっている?

 気になって見てみると、誰かが私達を追いかけて来ているみたいだ。

 ……攫われた私を見て、助けに来てくれたのかもしれない。

 どうにかして、この手を外さなければ……とは言っても太い片腕はびくともしない。

 私は護身用に渡されている小さなナイフを、どうにかして懐から取り出すと、腰を捕らえていた腕に突き立てた。

 宙に一瞬浮いた気がして……それから、大きな水音が聞こえた。