「お前こそ、何を言っている。婚約していても、まだご成婚はしていない。直前の婚約破棄だって、ありうるだろう。お前がラウル殿下の心を、射止めればな」
「絶対に、ないから」
メイヴィス様から略奪するなんて、有り得ない。不快感を感じて鼻に皺を寄せた私は、ひとつひとつの言葉を区切るように言った。
「どうだろうな」
顔の角度を斜めにして、にやりと微笑むヴァレール兄さんは、妹の私から見ても危険で魅力的だった。
「絶対に、ないから」
メイヴィス様から略奪するなんて、有り得ない。不快感を感じて鼻に皺を寄せた私は、ひとつひとつの言葉を区切るように言った。
「どうだろうな」
顔の角度を斜めにして、にやりと微笑むヴァレール兄さんは、妹の私から見ても危険で魅力的だった。