伯爵令嬢が退出していく様子を横目で見ながら、私もそろそろかと所定の待機位置へと移動する。

 二人の王子がダンスの相手しているだけあって、数多いデビュタントたちが居なくなっていく。

 私はこの会場入りした時と同じように、大きな声で名前を呼ばれると、滑るような動きで手が差し出された。

 ラウル殿下だ。

「やあ、ニーナ。久しぶりだ。より美しくなって見違えたよ」

「ありがとうございます……殿下と踊れるなんて、とても光栄です」

 軽やかにステップを踏みながら、ラウル様は私に意味ありげな笑顔を浮かべた。

「マティアスとジャンポールの二人と、最近親しくしていると聞いたが」

「街に一緒に出掛けた程度ですわ。殿下」

「そうかい? 君みたいな美しい令嬢は、数多の求婚者を惹きつけるだろうな。ただ、かれらは僕の大事な幼馴染兼近衛騎士の二人だから、少々心配になってね」

 踊りながらじっと薄茶色の目を向けて私を見た。探るような目だ。残念ながら私を弄ぼうと近づいてきたのは、貴方の幼馴染兼近衛騎士の一人です。殿下。

「私は男性を弄んだりしません」

 貴方の大事な、マティアスと違ってね。