「そう……だから、ジャンポールに任せているが、すぐに戻らなければならない。君とダンスしたかったんだけど、残念だ」
「そうですか……ぜひ、またの機会に」
こういう時のお決まりの言葉を伝えると、マティアスは長い手袋に包まれた私の手をさりげなく取った。
「ジャンポールとは、先程踊ったと聞いたけど」
「ええ。とても、お上手でした」
ジャンポール、そんなことまでマティアスに伝えたの。なんだか、牽制のようにも思える……。
「僕とも今度で良いから、踊ってくれると、そう約束してくれないか」
「ええ……もちろん」
踊るだけなら。いくらでも。今夜だって、沢山の紳士と思ったわ。
「約束だよ」
二度念を押すと、去っていった。
マティアスはどうして、あんなにまで、私にこだわるんだろう。
どうしてだろう。盲目的と言えるほどに、彼へ恋をしていた時は何も気にならなかったのに……とても、不思議だった。
デビュタントたちと王位継承権を持つ王子のダンスは、夜会のラストダンスだ。
身分の高いご令嬢から踊り終わったら会場から退出していくので、男爵令嬢の私は身分的に最後の方になる。
「そうですか……ぜひ、またの機会に」
こういう時のお決まりの言葉を伝えると、マティアスは長い手袋に包まれた私の手をさりげなく取った。
「ジャンポールとは、先程踊ったと聞いたけど」
「ええ。とても、お上手でした」
ジャンポール、そんなことまでマティアスに伝えたの。なんだか、牽制のようにも思える……。
「僕とも今度で良いから、踊ってくれると、そう約束してくれないか」
「ええ……もちろん」
踊るだけなら。いくらでも。今夜だって、沢山の紳士と思ったわ。
「約束だよ」
二度念を押すと、去っていった。
マティアスはどうして、あんなにまで、私にこだわるんだろう。
どうしてだろう。盲目的と言えるほどに、彼へ恋をしていた時は何も気にならなかったのに……とても、不思議だった。
デビュタントたちと王位継承権を持つ王子のダンスは、夜会のラストダンスだ。
身分の高いご令嬢から踊り終わったら会場から退出していくので、男爵令嬢の私は身分的に最後の方になる。