「ジャンポール様は……ダンスがお上手なんですね」

「……仕事上必要だったので、必死で練習したんだ。正直に言えば、あまり得意ではない」

 私と踊り終わりのお辞儀をして、苦笑したジャンポールは私の手を取ってダンスフロアから出た。

「ニーナ……彼は?」

「あ……ヴァレールお兄様。彼はジャンポール・ハサウェイ様。メイヴィス様の婚約者、第二王子ラウル殿下の近衛騎士です」

 踊っている時から見ていたのか、私たちがここへ来るのを待っていたかのように、ヴァレール兄さんは現れた。

 そして、私の隣に居るジャンポールを、値踏みかのように目を眇めた。

「ジャンポール様……私の二番目の兄、ヴァレールです」

「よろしく。妹がお世話になっているようで……」

「こちらこそ、はじめてお目にかかります」

「ところで、ハサウェイ殿には婚約者はいらっしゃるのか?」
「兄さんっ……」

 私の非難めいた視線と言葉を軽くいなして、ヴァレール兄さんはジャンポールへ視線を合わせた。

「いいえ。そちらの方面には、私はとんと疎く、これから探す予定です」