私の剣幕に呆気に取られたように魔法使いは笑うと、右腕を軽く動かして薄紫色の瓶の増加を止めた。

「……何なの? まだ、終わっていないけど」

「そうだ。君の言うとおり、何の努力をする機会を与えられないままのお姫様なんて、幸せなのか不幸なのかわからない。もしかしたら、今ならば間に合うのかもしれない」

「何が?」

 意味がわからなくて、眉が寄ってしまうのが、自分でもわかった。

 何が言いたいの? 謎かけのような言葉に、私は苛立った。

「時間を戻れば、この世界では死ぬことになる。戻れないということだ。それでも?」

「……構わないわ」

 未練なんて何もない。過去をやり直せると言うのなら。

「いってらっしゃい。可愛い人。その恋を助けることが出来たら、一回だけ何か手助けをしてあげよう」

 そして、私は意識が遠くなっていった。