私は部屋へと戻り、便箋を取り出すと実家に了承の返事と、すぐにでもデビューしたい旨を伝えた。

 ラウル殿下の情報は、ここで侍女をしているよりも、私自身が社交界に出た方が集まるだろう。

 私はすぐに、ミランダさんや執事長、そして仕えているメイヴィス様へ家に帰ることを伝えた。

 メイヴィス様は残念がってくれたけれど、事情を知ると社交界でまた会いましょう、招待状を出すからお茶会にも遊びに来てねと、可愛らしい顔で優しく笑ってくれた。

 どこまでも可愛いこの方と、死にゆく運命のラウル殿下を助けたい。

「ニーナ……寂しくなるわ」

「私もよ。セイラ。短い間だったけど、大好きよ。帰ったらすぐに、手紙を書くわ」

 別れの日、同室で良い同僚であるセイラと抱き合って別れを惜しんだ。

 見返りなどは求めずに私へ良くしてくれた彼女には、きっといつか何かを返したい。

 この時、私は感謝の気持ちを持ってそう思った。

◇◆◇

 私は王都に隅に建てられた、クルーガー男爵邸へと帰ってきた。