「政治的な問題でね。王太子フェルディナンド様は幼い頃体が弱かったので、王妃様は不安からか健康体で優秀なラウル王子には辛く当たったりすることもあったようだ。今は王太子フェルディナンド殿下も、無事に成人されている……それは、昔の話だよ」

 なるほど、幼い頃にそういう理由で冷遇されていたのなら今も確執があっても仕方ないか。

 けれど、そんなことが殺される理由になるだろうか?

 王太子が問題なく成人しているのならば、息子は未来の王で確定している。

 それならば、ラウル殿下を殺す理由にはならないんではないだろうか?

 私はどうにかして、ラウル殿下を殺される理由を考えなきゃいけない。

 ……きっと、彼を救う鍵はそこに隠されているんだから。

「ニーナ?」

 ジャンポールが、黙り込んでしまっていた私の名前を呼んだ。

 いけない。こんな場なのに、自分の考えに耽ってしまったようだ。

 私ははっとして、慌てて二人の顔を見た。

「ごめんなさい。少し気分が悪くて。今日はもうお開きにしましょう」

「それはいけない。僕が屋敷まで送っていこう」

 すぐさま、マティアスは言った。