私の下手な言い訳になんとか納得したのか、セイラは頷きながら良かったと笑った。

 世話焼きなセイラは、とても心配性だ。それに本当のことを言ったところで、きっともっと、心配されてしまうだろう。

 私が言ったことを、そのまま、鵜呑みして信じてくれたとしても。

「メイヴィス様の、婚約者のラウル様って」

 着替えながら、私は鏡を見た。

 そこに映る手早く髪を整えているセイラが、癖のある赤髪を複雑な編み込みをして、結い上げている。

「良い方よね……とても礼儀正しいしお優しいし、あのメイヴィス様のベタ惚れ具合がわかるくらいの素敵な美形よね」

 私と同じ頻度でしか会わないセイラだって、私以上にラウル王子のことを知っているわけないわ。

「……すごく評判の良い方よね。敵なんて、居なさそう」

 お仕着せのフリルのついた白いエプロン背中にあるリボンを後ろ手にくくる。

 クロムウェル公爵家のお仕着せは、可愛いんだけど、私は背丈にサイズを合わせると胸の部分が少しきつい。

「あら……貴女、知らないの、ニーナ」