見覚えのアル優しい笑みに、ドキンと胸が高鳴った。

「……ごめんなさい。これは、洗ってお返しします。その……」

「構わないと、そう言いたいところだけど……君にはまた会って欲しいから、そうしようかな」

 何を言っているのと、彼に目を向けた私に微笑んだ。

「泣き顔も可愛いけど、出来れば泣かせたくないな……」

 にこにこと微笑みながら、彼は私を見て来た。

 私はそれを惚けて見ながら、出来るだけ顔が赤くならないように、努力しなければならなかった。

 ……だって、そうなってしまうと私が何をどう思って居るのかなんて、彼にすぐに解ってしまうもの。


◇◆◇

「セイラ、ひどい」

 私はクロムウェル公爵邸に帰るなり、ベッドの上で本を読んでくつろいでいたセイラに苦情を言った。

 彼女は悪びれもせず、微笑んで舌を出す。

「だって、ああでもしなければ、会わないでしょう? それで……どうだったの? 仕事中でもない、素のグランデ様って、どんな方だった?」

「とても……優しかったわ」

 それ見たことかと笑うセイラを、私は恨めし気に見やる。