前も初めてデートした時も、彼はそう言ったっけ。同じ人なのだから、それは当たり前なのかしら。

 ……ううん、これはデートなんかではないけど。

「ありがとう……ございます」

 お礼を言いつつ、私も彼の宝石みたいなきらきらしい青い瞳をじっと見返した。

 マティアスの目の方こそ、綺麗で何処までも透き通っている。

 ……私がずっと断わり続けたら、彼のあの青い目には、次は誰を映すんだろう。

 そこまで考えて、はっとなった。

 そんなの……どうでも、良いはずだわ。失った恋なのに、また初めても同じように失うのに。


 なんで、それを繰り返さなければいけないの?

 ……私はじわっと、目に涙が浮かぶのを感じた。

「……えっ、ニーナ。一体、どうしたの?」

 泣き出しそうになった私に気がついたのか、マティアスは慌ててポケットから白いハンカチを取り出した。

 私は礼を言って、それを受け取った。

 ひとしきり深呼吸して、落ち着くと向かいに座るマティアスを落ち着いて見た。

 彼はいきなり泣き出しそうになった私に何も聞かずに微笑んで、こちらを見ていた。