ある時は花束を、ある時は素敵な髪飾りを一緒に。彼からの手紙なら、普通の令嬢ならば喜んで返していただろう。

 けれど、私は違う。

 彼との最後の瞬間は、今では朧気ながら覚えている。

 ずたずたに無惨にも引き裂かれた心を、未だにどうしようもなく持て余している。

「もうっ……本当に、強情なんだから。グランデ様は将来有望な近衛騎士で、あんなにもニーナの理想の外見をしている美形騎士の……どこが、気に入らないの?」

「何もかも……全部よ。セイラ」

 どんなに好条件が整っている男性だとしても、将来私のことを捨てるなら、それは要らない人なのよ。

 セイラは大きく、ため息をついた。そして、優しい黒目がちの目を細めた。

「それでは、お誘いの断りだけでも書いたら? 無反応は、あまりにも失礼よ」

「それは、確かにそうね」

 無反応はいけない。私は渋々と頷いた。

 優しいセイラだけれど、こういう礼儀の部分に関しては厳しい。

 そうよね。断ったなら……もう、彼と関わることはない。

 それより大事なことがあると、私は思った。