魔法使いは聞き返して、不思議そうに首を傾げる。

 私は血を流しているマティアスに、向き直った。心を込めて。私の考えていることを、これで知って欲しくて。

「私は何度出会っても、何度だって貴方に恋に落ちるわ。たとえ私が貴方を忘れてしまっても、ここに今居る私を探して、見つけて。マティアス。お願い」

 じっと彼の青い瞳を見て囁いた。

「愛しているわ。ずっとよ」

 その時、私の視界はピンク色の液体で満たされた。

 白く大きな光を放って、やがてそこは光に包まれた。


◇◆◇


 目を開くと、水平線が見える。視界全て、見渡す限りのブルー。

「ニーナ、そろそろ到着だ。下船の用意しろ」

 ヴァレール兄さんが、私に向かって言った。

 私は隣国のサリューへと商談に行く兄さんに着いて物見遊山の旅に付いて来たのだ。セレンディアの王都への航路は一週間程度。

 獣人が数多く住むサリューの旅は物珍しいことばかりで楽しかったけれど、長い船旅でくたくたになってしまった。