「……マティアスと私をくっつけようとしたのは貴方でしょう?」

「そうしたら、捨てられる時は辛いでしょうね。そう、きっと死にたくなるくらい……ね?」

 私は彼女の暗い目を見て、背筋がゾッとした。感じたのは、純粋な悪意。

「……どうやって呪いを?」

「悪魔と契約したの。私の命と引き換えに……どうだった? 自分の愛した人が自分のために死ぬなんて、苦しんだでしょう?」

 私は彼女の意図を知って、ぐっと息をつめた。後ろのメイヴィス様も、息を呑んだのを感じる。

「もう、終わりよ。貴方を騎士団に突き出すわ……それで何もかも終わり。私は悪魔との契約だって、解ける方法がわかっているもの」

 私の視線に訝し気な顔をしたセイラは、不機嫌な表情をした。

「そんなはずないわ。悪魔の紋様は……それこそ、古の魔法使いでない限り解けないはずよ」

 私はにこっと笑った。いつもセイラに笑っていたように。ずっと一緒に居たはずなのに、彼女の気持ちを分かってあげられなかった。

「古の魔法使いが約束してくれたの……あなたの契約だって、なくせないか聞いてみるわ」

「嘘よ! 嘘だわ!」

 セイラは錯乱したように、綺麗に結い上げた髪をその両手でぐしゃぐしゃにした。

「本当よ。あなたのことも魔法使いに聞いたもの……セイラ、だから」

 セイラは私をぎりっと睨みつけると、懐からナイフを取り出した。

「許せない!」

 この距離では彼女から逃げられないと思った私は、ぎゅっと目を閉じた。

 遠くでメイヴィス様の悲鳴が聞こえた。