「エヴァン様は、どうして私に合わないの?」

「君は甘えさせてくれる人の方が良いよ、僕みたいにね」

「まあ」

 私は笑って指でマティアスの鼻を弾いた。

「いつ甘えさせてくれたの?」

「今から、どう?」

「殺されちゃうけど、良いの?」

 マティアスはそうだったと言わんばかりに、渋い顔をして俯いた。

「残念だけど、やめとくよ……まだまだ死にたくないからね」

 苦笑するその顔に、私はなんだか嬉しくなって背伸びしてその頬に口づけた。

「……彼は帰ったのか」

 マティアスを見送りしてきた私に、偶然通りがかった様子のヴァレール兄さんは言った。

 最近はずっとそうなんだけど、眉間に皺を寄せて難しい顔をしている。ジャンポールとの婚約を目前にして白紙になってしまったことが、やはり気に入らないのかもしれない。

「ええ。何か?」

 私も素っ気なく返す。兄にどう言えば良いのかmわからなかったせいだ。この二番目の兄と私は髪と目の色のそうなんだけど、多分気性も似ている。

 どうしても、自分が良いと思ったことを突っ走りがちな性格なのだ。