ジャンポールの真摯な目は私をじっと見ている。なんだか、自分がすごく恥ずかしいことをしているようで顔を伏せた。

「……君はさっき、俺の事を好きになりかけていたと言った。どちらかを選ぶのならすべてが解決してからにしてくれないか」

「……ごめんなさい。けれど、私はもう、貴方と結婚出来ない……」

 私の言葉を聞いて、彼は眉を上げた。言わんとしていることも分かってくれたんだと思う。

 ……もう私は選んだ後なんだと。

「それでも良いと言ったら? 家の事だって、ニーナに肩身の狭い思いは絶対させない。俺が責任を持とう」

「ジャンポール……どうして」

「……どうしてか……それは君にも覚えがあるんじゃないか。君がこの時間に来る前、失恋した直後に一縷の望みがあったらどうする? それに、縋りたくはならないか?」

 私はもう何も言えなくて、じっとジャンポールの顔を見た。

「……君の前の恋が幸せも絶望も混じり合った紫色だったとして、それを幸せな恋にするのは俺だ。あいつにも譲りたくない。頼むから、結論を出すのを急がないで欲しい」

 間をおいて頷いた私に、ジャンポールは嬉しそうに笑ってくれた。

「協力するよ。早く解決して、事態を好転させたいからな」

「ジャンポール、でも。……言った通り王妃やフェルディナンド様が関わっているかもしれない。それを知っていたら貴方の身も……」

「……俺だって命をかけると言ったはずだ。ニーナ。この身をもってその言葉を示すよ」