ヴァレール兄さんがシメオン兄さんを宥めている。いつもとは、真逆の光景だ。

「……ミレイユ様は、王妃の姪。フェルディナンド様の従妹です。あれだけの情報を知っているということは……彼らと何か関係があるかもしれません」

 私の言葉に、また部屋の中がしんとなった。

「厄介だな、王位継承権の話も絡むのか……エヴァン」

「わかってるよ。次は俺だもんね。どうにかして探ってくる。でも、僕ミレイユ嫌いなんだよな~。マティ兄だけ可愛い婚約者出来てズルいよ」

 カイン様の呼びかけに頷いて、エヴァン様は不満げな顔をした。あ……マティアスではなく、エヴァン様が彼女の婚約者候補に繰り上げになったということ?

「マティアス、死ぬ覚悟があるなら死ぬ前に最善を尽くせ。わかったな」

 カイン様の真剣な声が、部屋の中に響いた。