「何も言わずに悪魔と契約、ラウル殿下と心中ねえ」

 次男アベル様がククっと面白そうに笑いながら、マティアスと私を見た。

「本当に馬鹿だな。彼女が居てくれて良かった。馬鹿な弟と言えど肉親だからな、失えば悲しいだろう。お前は後に残される家族の気持ちは、考えたのか? ニーナもこれでは浮かばれない」

「……申し訳ありません」

「身内の恥を晒すことになる、もし、彼女と結婚したら縁続きにはなるが……ニーナ嬢、不肖の弟だが、よろしく頼む。君の助けがなければ、この馬鹿の首が落ちるまで、俺たちは何も知らないところだったからな」

「マティ兄は、悪魔と会ったの?」

「エヴァン、それは話の後にしろ」

 きらきらした青い目を輝かせながら話に入ってきた四男エヴァン様は、カイン様の声にちえっと舌打ちしながら黙ることにしたようだ。

「……何か、手掛かりはあるのか」

「ミレイユ様が……モルガン家のミレイユ様が、マティアスが一年後に死ぬのを知っていました。それに間接的にですが、私とマティアス様を誘拐したことを認めました……決して証拠などは見つからないだろうけど、と」