シメオン兄さんとヴァレール兄さんも、何の事情も聞かずに、いきなりこの場に呼ばれ戸惑っているようだ。
「……お願いがあります」
「言ってみろ」
短く言い捨てると、カイン様は言葉を待つように私を見た。
「信じていただけるかは、わかりませんが」
私は何度目かになる説明を、繰り返した。
私が今ここで時を超えてやり直しをしていること、ラウル殿下やマティアスが受けた呪いのこと、呪いには必ずかけた人物がいること、そこを押さえる手助けをして欲しいことなど、順序だてて説明した。
カイン様は顔色を変えずに、正面に座ったマティアスに視線を合わせた。
「……マティアス、相変わらずだな、お前は」
「兄上」
「何故……私にも相談もせずに、そこまでのことをした?」
「申し訳ありません」
「何も言わず、一人で死ぬつもりだったのか」
「……それが最善だと思いました」
カイン様は顔を傾けて、マティアスを見た。女性のような美しい顔をしているが、無表情で厳しい表情を崩さない。刃物のような鋭い存在感だ。
「何が最善かについては、これから当主になる私が判断する。良いな」