「私を馬鹿にしないで! 私を守るために死ぬ? そんなの言い訳よ、記憶まで勝手に消すなんて……よくもそんなことを! ラウルもマティアスも悲劇のヒーローに酔っているだけじゃない! 何も知らせずに死ぬなんて……許さないわ」

 可愛い顔を怒りの表情に染め、メイヴィス様は私の方を振り向いた。

 ふう、と一度息を整えて、表情をいつも通りの笑顔にくるりと変える。流石生粋の公爵令嬢だわ。

「ニーナ、一人で辛かったわね。話してくれて……ううん、私にも知らせてくれてありがとう。もう、一人じゃないわ。一緒に解決していきましょう。そうね、ここには分からずやが二人居るようだけど、私が責任を持って勝手させないわ。安心して頂戴」

 ラウル殿下は口元に手をやって心底驚いた表情だし、マティアスと言えば凍り付いたように動かない。

 私はふふっと笑った。メイヴィス様は今選んでくれた。自分も一緒に戦うことを。

「メイヴィス様、私そう言ってくれるって信じていたんです。貴方の恋の色、美しくて、恋敗れて傷ついていた私も、思わず見惚れるくらいだった。とても良い恋をしてるって思ったんです。私達はお互いにそれを絶対に失いたくない。……一緒に戦いましょう」

 私の言葉にメイヴィス様は、いつもの笑顔でにこっと微笑んでくれた。