「ラウル! ……あら、ニーナにマティアスまで。どうしたの。ジャンポールは?」
明るい彼女は、何があったのかも知らず、無邪気にきょろきょろと辺りを見回す。
公爵令嬢であるメイヴィス様は、婚約者ラウル殿下の急な呼び出しに応えて王宮の謁見室までいらっしゃった。
今は……何も知らない。相変わらずの美々しい顔に、何の憂いもない笑顔を浮かべている。
「……メイヴィス、今日も美しい。今日は君にすこし話があって、呼び出したんだ。座ってくれるかい?」
もちろんと大きなソファにふわりと腰掛けるメイヴィス様。私の顔を見て、にこっと微笑んでくれた。
「ニーナ。あのお茶会以来だわ。急ぎの用があるって帰ってしまったけれど、大丈夫だった?」
「はい……途中で帰ってしまって申し訳ありませんでした。メイヴィス様もお元気そうで何よりです」
「ありがとう」
メイヴィス様はきょろっと辺りを見渡す。
「……あの気を悪くしないで欲しいんだけど、何故マティアスと一緒に居るの? ニーナはジャンポールと婚約するって聞いているんだけど……」