「……話さないつもりだが?」

 首を傾げて、不思議そうに私のことを見る。またこの人は……全部彼女に黙ったままで、何もかも進めてしまうつもりなのね。

 私はラウル殿下をじっと見つめた。

「私……とても、怒っているんです。二人に対して」

「ニーナ?」

 私の隣からマティアスが、慌てて口を挟む。

 確かに目の前のこの人はこの国の第二王子様で、マティアスの上司で、不敬が過ぎたら私は殺さてしまうのかも。

 でもだから、どうしたって言うの。ことなかれと何も聞かずにいれば、二人は何も言わずに死んでしまったではないの。

「私たちに何も言わないで、状況的にそれが一番良いって思った気持ちはわかります。でも……私は話して欲しかった。何も知らされず、終わりたくなかった。力及ばず死んでしまうにしても、ギリギリまで一緒に居たかった。私もどうすれば一番良いのか、一緒に考えたかった」

「ニーナ……」

「お願いします。もう仲間外れにしないで。私は恋人が死んでしまうのに、私を救うために別れを選んだ彼を責めるだけ責めて、何も、何も出来なかった……」