「ああ……あの魔法使いはこの国に居を構えるのに、当時の王家との盟約で力を借りることを条件付きで許されているが、その願いとて気まぐれでほぼ叶えられたことはないな。だから君がここに居てやり直しをしているというのも半信半疑なんだ。君の言っていることに、矛盾はない……ないが、なんだか、夢のような話だなと思ってね」

「……私もそう思う事はあります……今でも長い夢を見ているような、不思議な気分です」

「それでは……僕たちの呪いを解いて貰って、終わるのか?」

 マティアスは、目に見えてすごく嬉しそうだ。今まで自分は一年後に死ぬかもしれないと思っていたのだから、当たり前なのかもしれない。

 ……でも。

「ううん……私はそれだけでは、終われないと思う……二人に呪いをかけた犯人を、捜しださないといけないと思う。そうでないと、また同じことの繰り返しになる……私は絶対に二人を死なせたくない」

 沈黙の後で、ラウル殿下はにこりと笑ってくれた。

「ニーナ、ありがとう……そうだな。事が上手く行けば、君は命の恩人ということになるな」

「殿下……メイヴィス様には、このことは?」