「魔法使いのところに、メイヴィス様の記憶を消しに彼女を連れて行きましたか? ……とっても大事なことなんです。教えて欲しいんです」

 私の言葉を聞いてラウル殿下が、息を呑んだのを感じた。マティアスも何か言いたげだけど、私と王子を見比べて、何も言わない。

「君は……一体、何を知っている?」

 見る間に難しい表情になったラウル殿下は手ぶりをして、人払いをした。部屋の隅に控えていた近衛騎士やメイドも音もなく、隣室へと居なくなった。

「別に……信じてくれなくて構いません。けれど、聞いて欲しくて」

「ニーナ?」

 マティアスも不安気だ、まさかこんなことになると思っていなかったんだろう。

 私は今の状況を、出来るだけ包み隠さずに詳しく話した。

 やり直す前にマティアスに捨てられたと思い、その失恋の記憶を消すために魔法使いの元を訪れたこと、その時にやり直しをすることになり、今ここに居ること。

 マティアスから無理やり真相を聞いて、自分の思い込みが間違っていたこと、それに気が付いたこと。

 これからは、ラウル殿下とメイヴィス様のお二人を救うために動きたいことなどを話した。