「やあ、ニーナ。ジャンポールを振ることになって、結局はマティアスにしたらしいね。二人を振り回して悪い女の子だな」

 そう悪戯っぽく微笑みながら、彼は私の手にキスをした。

「お二人とも、とっても魅力的で、選び難かったんです。お騒がせしたことは、お詫び申し上げます」

 からかってくるラウル殿下に、私は謝罪の言葉を口にし苦笑を向けた。

「おや……この前のダンスをした悲しそうな君とは、まるで別人みたいだ。何かあった?」

 私たち二人にもソファに座るように促し、自分も向かいの席に腰掛けた。

 彼にとって気心の知れた護衛騎士マティアスが居るせいか、ラウル殿下は雰囲気が柔らかくて、肩から力が抜けている。

 まさか私がこんなことを聞こうとしているなんて、思いもしていないはずだもの。

「あの……ラウル殿下、私どうしても殿下に聞きたいことがあるんです」

 私は仲の良い二人の軽口がはじまらないうちに、真面目な話を切り出した。

 ラウル殿下は興味深そうに頷き、マティアスは隣の席から私をまじまじと見た。