「……あらっ、ニーナ。もしかして、お二人の中で気に入った方が居るの?」

 メイヴィス様が私の方を振り返って、期待満々の眼差しを向けて微笑んだ。

 可愛い笑顔に心は和むけれど、そうではない私は慌てて否定の意味で手を振った。

「いえ、お二人とも、なんだか対照的なご挨拶だなと思ってしまって……失礼致しました。申し訳ございません」

 顔を引き締めて、顔を俯かせる。

 今着ているドレスの橙色の小花柄が、目に入った。

 私の実家では決して買えない、とても上質な生地だ。

 ……だからかもしれない。あの時も……きっと、勘違いしてしまった。

 マティアスに愛される資格など、きっとこんな貧乏男爵家で働くしかない私にはないのに。

「せっかくだから……皆でお茶をしようか?」

 あの時と同じように、ラウル王子は提案した。身分違いなど気にせずと良いと言われても、そんな訳にはいかない。

 それでも、メイヴィス様は、手を組んで喜ぶ。

 私はラウル王子の傍に控えているマティアスを見た。

 あの時と同じように、きらきらと輝く青い瞳で、私を見つめている。