「……君は馬鹿だよ。二つしかないのに、簡単な選択肢を間違っている。ジャンポールと結婚したら、伯爵夫人になり、君の実家の立場も盤石なものとなる。一生、お金に困ることのない道だ……僕と結婚したとして、すぐに未亡人になり、君も働かないと、生きていけないだろう」

「勝手に決めつけないで。それに、私、働くの好きなのよ。知らなかった?」

「君は馬鹿だよ、でも、とびきり可愛くて、僕の意見なんてぜんぜん聞かない……とてもずるい生き物だ」

 マティアスは綺麗な青い目からいくつも涙を流しながら、私のことを抱きしめた。

「……君の兄さんたちは、きっと僕とのことを許してはくれないだろうな」

 マティアスは私を後ろから抱きしめて、髪の上にキスを降らせながら言った。

「そんなの……関係ないわ」

「それが、関係あるんだよ。君だって貴族の娘だろう? 僕と結婚すると言ったところで、家に閉じ込められて終わってしまう」

 私は後ろを振り返って、マティアスの唇に軽く噛みついた。柔らかくて、甘くて、気持ち良い。

「私、今日はここに泊まる」

「ニーナ?」