アベル様は執事に短く言い放つと私の手を取り、以前にも来たことのある、マティアスの部屋の前へと案内してくれた。
彼はガンガンと力強くノックし、乱暴に扉を開ける。
「マティアス。客だ」
「……誰にも会わないと、言っておいたはずだけど」
寝室からマティアスの沈んだ声が聞こえた。ミレイユ様が私にあの様子であれば、当の本人の彼がどんな侮辱的なことを言われていたのかを察することは出来た。
「俺の客だ。お前にも会いたいというから連れて来た……どうしてもというならば、このまま俺の部屋へと行っても良いが? なあ、ニーナ嬢」
アベル様に悪戯っぽく笑うと、片目を瞑った。ばたっと奥から大きな音がして、マティアスが慌てて出て来た。
少しだけやつれた顔に、乱れた服。はだけたシャツから、悪魔の紋様が覗いていた。
アベル様はそれを見て目を眇めると、私に向かって微笑んだ。
「どうぞ。ゆっくりして行ってくれ。この馬鹿な弟が物足りなかったら、今度は俺の部屋に忍んで来てくれても良い」
「兄さん!」
マティアスは急ぎ、私の手を取ると庇うように前に立った。
彼はガンガンと力強くノックし、乱暴に扉を開ける。
「マティアス。客だ」
「……誰にも会わないと、言っておいたはずだけど」
寝室からマティアスの沈んだ声が聞こえた。ミレイユ様が私にあの様子であれば、当の本人の彼がどんな侮辱的なことを言われていたのかを察することは出来た。
「俺の客だ。お前にも会いたいというから連れて来た……どうしてもというならば、このまま俺の部屋へと行っても良いが? なあ、ニーナ嬢」
アベル様に悪戯っぽく笑うと、片目を瞑った。ばたっと奥から大きな音がして、マティアスが慌てて出て来た。
少しだけやつれた顔に、乱れた服。はだけたシャツから、悪魔の紋様が覗いていた。
アベル様はそれを見て目を眇めると、私に向かって微笑んだ。
「どうぞ。ゆっくりして行ってくれ。この馬鹿な弟が物足りなかったら、今度は俺の部屋に忍んで来てくれても良い」
「兄さん!」
マティアスは急ぎ、私の手を取ると庇うように前に立った。