クロムウェル公爵家のお茶会は途中で、まだ閉会もしていない。

 私は失礼を承知で主催者のメイヴィス様に挨拶を済ませると、急ぎ、マティアスの家グランデ家に向かった。

「お願いします。マティアス様に合わせてください。急用なんです」

「……訪問のご予定もなく、先触れの知らせもなく、いらっしゃった方には、お帰りいただくようになっております」

 玄関で初老の白髪の執事に、止められてしまった。当然だ。彼の言うとおり礼儀も何もない訪問でに、会わせてもらえない。

 どうしよう。私が泣きそうになってドレスを握り締めたところで、奥の方から声がした。

「そこに居るのは、ニーナ嬢ではないか。やっと、動く気になったのか」

 扉の奥、見上げるとマティアスの兄、アベル様がゆったりと階段を下りて来た。彼は外出する前だったのか、黒い手袋を嵌めているところだ。

「アベル様!」

 味方になってくれる人の偶然の登場に、嬉しくて涙が零れそう。マティアスと、会えるのかもしれない。

「アベル様、こちらは……」

「俺の客だ。構わない。通せ」