ラウル王子は大きなソファから立ち上がり、メイヴィス様の手の甲にキスをしながら私たちのことを尋ねた。

「私のお気に入りの侍女の二人よ! 左がセイラで、右がニーナ。とっても、可愛いでしょう?」

 無邪気に笑うメイヴィス様を愛おしそうに見やると私達にも視線を合わせて微笑んだ。

 この王子様も、温厚で表向きは、とても性格が良さそうだ。ただ、彼は外交関係のお仕事をされているから、どんなに人当たりが良さそうでも内側はわからないけれど……。

「なるほど……君の言う通り、とても可愛いね。せっかくだから、僕の連れてきた近衛騎士たちにも紹介しよう……マティアス、ジャンポール」

 ラウル王子はにこっと人の良い柔和な笑顔を浮かべると、両脇に控えていた二人に合図をした。

「美しいお嬢様たち、マティアス・グランデです。お見知りおきを」

 にこりと魅力的な笑みを浮かべて、マティアスは笑った。

「ジャンポール・ハサウェイです」

 マティアスと対照的に素っ気なく言ったのは、ジャンポールだ。

 ……彼らしいな。私はいつも愛想のなかったジャンポールの対応を思い出してふふっと笑った。