私が朝食の席へと座ると、シメオン兄さんが声をかけてくる。父様は昨日から領地に出ていないし、母様も同行している。

「ヴァレール兄さんは?」

「さあね。最近は、デイヴィス家の未亡人と仲が良いらしいが」

 眼鏡をかけて書類を見ながら、シメオン兄さんは仕方なさそうに微笑む。

 ヴァレール兄さんの未亡人との気軽な火遊びは、今にはじまったことでもない。

 私が帰ってから色々とあったから、家にいつも居るようにしていたみたいだけど、昨夜は私とジャンポールと上手く行ったと思って、安心したのかもしれない。

「そう……今日はあまり、量は要らないわ」

 私は朝食を給仕ているメイドに言った。

 私も少し前まで同じようなことをしていたのに、今はされる側だ。なんだか不思議な気分。改めて思うけれど、お金があるって大事なことなんだわ。

「食欲がないのか?」

「そうね、なんだかお腹に入らなくて」

「……何かあったのか?」

 シメオン兄さんは、いつも妹の気持ちを最優先にしてくれる。

 ヴァレール兄さんもそうなんだけど、自分が思う私の利益優先なところがあるから。