私は素っ気なく挨拶を返す。お金を稼いでくれたり邸を建て直してくれたり、兄さんにはとても感謝はしているけれど、マティアスを追い返した時から、あまり良い感情を持てないでいた。
「顔と唇が赤いな」
からかうような口ぶりに、私はカッとなって言い返した。
「兄さんには、関係ないことでしょう」
「……上手く行っているならならば良い。結局、あの誘拐もなんだったのか、何もわからないままだからな」
急に真面目な顔をして、兄さんは言った。
「……私をマティアスに、襲わせようとしたから?」
「単純に考えたら……そうだろうな。そして、その場面をハサウェイ殿に目撃させて、婚約の話を破談にしようとしたのかもしれない」
「でも……何故、椅子に縛っていたのかしら?」
その思惑を達成するのならば、縛らない方が絶対に良いのに。
「さあな。俺に聞くな」
すげなく言うと、ヴァレール兄さんは悪い顔で微笑んだ。妹に向けられた、魅力的な危険な笑み。兄という身内でなければ、簡単に騙されてしまうかもしれない。
「クルーガー男爵家としては、この縁談は必ず成立させたい。わかったな、ニーナ」
「顔と唇が赤いな」
からかうような口ぶりに、私はカッとなって言い返した。
「兄さんには、関係ないことでしょう」
「……上手く行っているならならば良い。結局、あの誘拐もなんだったのか、何もわからないままだからな」
急に真面目な顔をして、兄さんは言った。
「……私をマティアスに、襲わせようとしたから?」
「単純に考えたら……そうだろうな。そして、その場面をハサウェイ殿に目撃させて、婚約の話を破談にしようとしたのかもしれない」
「でも……何故、椅子に縛っていたのかしら?」
その思惑を達成するのならば、縛らない方が絶対に良いのに。
「さあな。俺に聞くな」
すげなく言うと、ヴァレール兄さんは悪い顔で微笑んだ。妹に向けられた、魅力的な危険な笑み。兄という身内でなければ、簡単に騙されてしまうかもしれない。
「クルーガー男爵家としては、この縁談は必ず成立させたい。わかったな、ニーナ」