「怒鳴ってごめん。……僕は今、媚薬を飲まされているんだ。縄が切れたら君を襲いかねない。だから……絶対、ダメなんだっ」

 媚薬? 確かにマティアスの息は荒い。

 興奮もしているようだ。白い肌がピンクの赤みかかっているし、すごく色っぽい。そんな……。

「でも……このままだと……」

 狭い部屋ではない。窓からの景色を見れば、二階だろうか。階下には私を攫った人が居るのかもしれない。

「……少し待ってくれ。もう少ししたら、この症状も収まるかもしれないからっ……」

 マティアスは、綺麗な顔を歪ませて私を見た。

 私が目覚めてから、だいぶ時間が経っただろうか。

 良くなるどころか、マティアスの息遣いはどんどん荒くなる一方で、可哀想になる。

「あの……マティアス」

「……ん、何」

「どうしたら、楽になる? つらそうで、とても見ていられない」

「……ニーナ」

 マティアスの綺麗な青い目には、隠せないほどにまで強い渇望が見えた。

「……触って、欲しい」

 項垂れたマティアスの息遣いが感じられるまで近づくと、彼の前に跪いた。