いつもは執事がまとめて手紙を持ってきてくれるのだけど、もしかしたら誰かの物に混じってしまっていたのかもしれない。

「何かしら」

「お手紙を言付かりました」

 一通の手紙を差し出される。ひっくり返してみると公爵家でメイドをしていた頃お世話になった元同僚セイラだ。

 ついこの前まで、同じ部屋で過ごしていたな彼女がなんだか懐かしい。

「ありがとう」

 私はセイラの手紙をすぐに読みたくて、部屋へと急いだ。

 何度か手紙のやりとりをしているけれど、別れの時以来まだ会えていない。

 手紙には私と久しぶりに会って話がしたいということがしたためられていた。

 私もこのもやもやの原因を話せないにしても、誰かと話したい気持ちだったから、すぐにセイラと会いたいと返事を出した。


◇◆◇


 久しぶりの一人の街歩きに、気分は高揚していた。とは言え、この前のこともあり、護衛付き。

 現在、裕福な男爵家の令嬢になってはいる私だけれど、公爵家でメイドとして働いていたころの方が、必死で家を建て直した兄さんたちには悪いけれど、自由で良かったかもしれない。

 そんな浮かれた気分で居た時に。