それから、マティアスは結局何も話してくれることはなかった。

 私はシメオン兄さんが迎えが来てくれる時間になり……今夜は時間切れ。

 ただ、私の送る手紙にはこれからは返信してくれると、そう約束してくれただけ。

 やっぱり、私が送った手紙は届いていたけれど、本人に無視されていたみたい。完全に誤解で濡れ衣だったから、ヴァレール兄さんにも謝らなければいけない。

 こちらで出会ったばかりの……あの時の自分と同じように手紙を無視されているだけなのに、こんなにも胸が痛むんだろう。

 同じことを、マティアスから、返されているだけだ。

 出会いの当初、必要以上につんけんしていた私は、それを甘んじて受け入れなければならない気がしていた。

 ここでも強く実感した。自分が過去にしたことは、もう二度と覆らない。

「あの、ニーナ様」

 新入りのメイドサラに呼び止められて、私は振り返った。

 新入りとは言ってもクルーガー男爵邸を綺麗に改装するのに伴って、使用人も数多く雇い入れた。

 サラはその中の一人だ。昔から居てくれているメイドも居るけれど、元貧乏男爵家には数人しかいない。