「いたずら電話?」
「そう。固定電話に頻回に掛かってきて困ってるの。相手は無言だし、こっちの反応を確かめているみたいで気味が悪くて」

 ある日、友人が電話でそんな相談をしてきた。話している間にも電話が掛かってくることを恐れ、スマホからではなく固定電話から掛けているらしい。

 友人は3ヶ月前に結婚し、旦那とオートロックの立派なマンションに引っ越した。稼がねばと一層張り切る旦那は、ここのところ帰宅が遅く、日中広く静かな部屋に一人いると電話の音が気になって仕方がないのだという。

「向こうも人間だよ。そのうち飽きてくるって」
「そうかな」
「大丈夫、大丈夫」

 友人を励まし、じゃあねとその日は電話を切った。
 翌日、なんとなく気になって友人に電話を掛けた。しかし友人は電話に出ない。しばらくして、私は友人が遺体で発見されたことを知った。