誰かが後ろを着いてきている気がする。
距 離を取ろうと早足になると、相手も早足になる。立ち止まってみれば、足音が消える。付かず、離れず、まるで監視をするような気配が背中にひたりと張り付いていた。

 彼氏は元彼と円満に別れてから出来ていない。職場も女性が多く、男性と関わる機会は公私共になかった。だから心当たりがない。それならば愉快犯かと、震える肩を抱きながらカーブミラーでこっそりと後ろを伺う。

 しかし、そこには影ひとつなかった。確かにすぐ後ろで足音はしていたはずなのに、まるでそれが幻聴であったかのように暗い道が続いていた。勘違いか、それとも隠れているだけなのか。答えを出せないまま、できるだけ遠回りをし、足早に家を目指した。

 なんとか家に辿り着き、ドアの鍵とチェーンを掛ける。同時に安堵の息を吐いた。あぁ、無事に家に帰れてよかった。