過労から来た発熱は案外長引いてしまった。
もう、文化祭前日だ。

その間、ずっと麗菜の執事さんに気遣って貰った。

そういえば、私は麗菜の執事さんとしか呼んでいなかった。

今後は八木(やぎ)さんと呼ぶことにしよう。

何度か麗菜の家には行っているのに、なぜ名前を知らなかったのだろう。

「深明様が元気になられて何よりです。

文化祭、私も少し麗菜お嬢様の様子を見に行くつもりでございます。

深明さまも、くれぐれもご無理をなさらぬよう。

深明さまもご一緒に学園までお送りしましょう。

病み上がりで風邪がぶり返しては困りますので」

「すみません、ありがとうございます、八木さん」

「とんでもございません。
深明さま。

麗菜お嬢様以外のクラスメイトの方と、先入観を外して話してみるのも大切でございますよ。

疎まれていると思いこんでいるのは深明さまだけで、実は違うかもしれませんよ?」

そう言われてもねぇ……


「さぁ、学園に到着いたしました。

お気をつけて、麗菜お嬢様、深明さま」

「ありがとうございます、八木さん」

「ありがとう!
行ってくるね、八木さん。

終わる頃に連絡するから、お迎えお願いね」

麗菜は、私の手を引いて、学園の門をくぐっていった。