コンコン、と部屋がノックされた。

ドアの隙間から顔を出したのは麗菜だった。

「起きた?

もう、ビックリしたよ。

深明のスマホに電話したら、斎藤くんが出てね。

深明が熱出したから、家教えろ、って。

私は知ってたけど、深明の指紋じゃないとドア、開かないし。

誰もいない深明の家で何かあったら困るだろうって思って。

私の家なら広いし、部屋もたくさんあるから、ここに連れて来ちゃった。

斎藤くん、口をポカンとさせてたな。

ごめんね、いきなり、しかも何も言わずに連れて来て。
やっぱり、自分の家の方が良かったよね」

麗菜の言葉に、首を振った。

「そんなことないよ。
むしろ、ありがとう。

今度、麗菜の両親にお菓子持って行くね。
美味しいところ、知ってるんだ」

「そんなの、いつでもいいって!
 っていうか、お菓子はなくても大丈夫だよ……
 両親同士が知り合い、ってそういうことだし。

ほんと、無茶しすぎだぞ?深明。
深明の母親そっくりだね。

あの親あってこの子あり、ってわけだけど」

麗菜はそこで言葉を切って、私と目線を合わせるように、近くの椅子に腰掛けた。