「あ、ありがと。

嬉しいな、こういうの。

後でお礼するよ、何がいい?」

「お礼?
文化祭の中では食べ物買ってお礼とかはいらないよ?
俺の深明への気持ちに答えをくれれば、それでいい」

「ん?
どういうこと?」


ヨッシーの言葉に、キョトンとする。

「ったく、鈍いんだからよ、深明は。

こういうの、女の方が敏感なんじゃないの?」

ヨッシーに腕を引っ張られて、野球部員のロッカールームの建物の影に入る。

そこは、並んでいる人たちから、丁度死角になる位置にある。

「昔から思ってたけどさ。
俺、深明のこと好きなんだわ。

深明にその気持ちがあるなら、俺の彼女になってくれる?」

「ヨッシーさぁ、部内恋愛大丈夫なの?
私は臨時マネージャーだからいいけど。

あんまり恋人らしいこと、自信ないかもしれないけど。
それでも良ければ、よろしくね?」

そう言って、ヨッシーの頬に軽く口づけた。

「ねぇ。
この先は、もう少し関係が進んでからね?

呼び方はいつもどおり、ヨッシーでいいよね?
今更呼び捨て、何か慣れなくて」

「んー?
何でもいいよ。

とりあえず、この後一緒に回るか、深明」

「うん!
とりあえず、焼きそばとからあげ食べたい!

クイズ企画の司会もやって、疲れたからお腹空いてて」

「俺も空腹だから、深明の分まで買ってやる。
大事な彼女には財布を出させない主義なの」

「ありがとう!
何かこういうの、すっごく嬉しい!」

「ふふ、俺も嬉しい。

はぐれんなよ?深明」

ヨッシーの手を握り返した瞬間、爽やかな秋風が吹いた。
それは、私たちの恋の始まりを応援してくれているかのようだった。