野球部の企画はストラックアウトだ。

中学生や大人でそれ目当ての列が作られていた。

巷では日本から海を渡った選手たちの連日の活躍がニュースにならない日はない。

その影響だろうか。

「思いの外大盛況だね!
ちょっと、ここまでとは予想してなかった」

「きっと、これが興味を引いたんだろうよ。

臨時にしておくにはもったいない、いいマネージャーさんだよ、深明は」

ヨッシーの指差す先には、丁寧にピッチャーの球種や、ボールの握り方を解説した動画やパネルがあった。

私が両親や、ヨッシー、巽(たつみ)先生に協力してもらいながら、時には徹夜して仕上げたものだ。

「皆、何となく見てるだけで、詳しいことは分からないからな。
解説者も、球種は伝えてくれるが、それだけでは何とも分からない部分も多い。

しっかり観る、いいとっかかりになるんだろう。

俺も、これで野球に興味持ってくれる人が増えれば嬉しいし。

お疲れ様、深明マネージャー。
熱出すほど頑張ってたからな」

そう言って、ヨッシーは、私の頬に冷たいソーダフロートを当ててきた。

「頑張った深明にご褒美。
こういうの、好きだろ昔から」

ヨッシーは、私の好みを知り尽くしている。
何でだろう。
 
もしかして、ヨッシーってば。

私のこと、ちゃんと女の子として見てくれてる?

思い当たる節は、それなりにあった、はず。

私が熱を出す前の、屋上でヨッシーが掛けてくれた言葉が脳内再生された。

『ちょっとはいい女だって自覚したらどう?』

『襲われたらどうする気だったわけ?』

『まだ、深明とはただの女友達だからさ。
何かあっても深明のこと、守ってやれないし』

これらの台詞は、つまりそういうことだったのだ。