すっかりフリーアナウンサーとして顔が売れてしまっているので、お忍びだ。
帽子とサングラスという簡単な変装だが、いともあっさりバレて、サインをねだられていた。

「ごめんね。
ホントは1人1人にサインしたいところだけど、
大変なことになるからそれは止められてて。

郵便で、この学園のために書いたサインを後日郵送する、ってことで手打ちにしてもらってるのよ」

申し訳なさそうな美冬さん。

意外にポイントを稼げなかった美冬さんは、結構自信あったのになぁ、と残念がっていた。

「美冬!
久しぶりね!
娘の美香(みか)ちゃんは大学の建築学科だっけ?
合格したんだよね?
おめでとう!」

「そうそう、合格祝い、すっかり忘れてたわ。
後で渡すね!」

私の母と麗菜のお母さんが、仲良さそうに話していた。

いつの間に来てたんだ……

それにしても、美香ちゃんは両親の職業に一切影響を受けていない進路で、意外だった。

母親の美冬さんがアナウンサーとして取材に入る先の建物の方に興味があるのだという。