光希は焦っている様子。
「せっかくだし、違う話しない?」
なんて、明らかに話題を変えたがっている。
自分から婚約破棄したけれど、婚約者を失ってもこんなものなのかと思っていた。
でも、他に相手がいたのならなんだか納得。
あぁ、本当に婚約破棄して正解だったなと。
だけどどうしても悲しい気持ちは出てくるもので、素直に光希のことを信じようとしていた私は何だったのだろうと思ってしまう。
「私ちょっとお手洗い。」
席を立って、お手洗いへ行く。
個室に入る前に涙が溢れてしまった。
しかも、運の悪いことに個室は埋まっていて身を隠すことが出来ない。
トイレ横の壁を向いて立ち尽くし、声を押し殺して涙を止めようと必死になる。
トイレが開き、誰かが出て行った音がした。
それでも私はそこから動けずにいた。
勝手に溢れ出てくる涙をどうやって止めようかと考える。