私が顔からハンカチを離すと、男の子が声を上げた。
「てか、土汚いから立ちなよ、汚れちゃうよ」
優しい声だった。
私は今出る精一杯の声で言い返した。
「足に力が入らなくて立たないの」
男の子は無言で立ち上がると、私の腰に手を当ててヒョコッと立たせてくれた。少し恥ずかしかった。
男の子が私の正面に来る。私は顔を上げて男の子を見る。
私より30センチ程高い背。鼻と口はモデルさん並みに整っていた。目は一重のタレ目で優しさが滲み出ていたのだけれど、ほんのりと赤く染められて丁寧にワックスでセットされたスパイキーショートの髪でヤンキーを連想させた。半袖のシャツから伸びる長い腕は細い割に筋肉質なのがわかる。私が1番目がいったのは、両耳タブについているリングピアスだった。
…違うじゃん。私の想像は完璧に外れた。