3時間目の終わりを告げるチャイムが鳴ると同時に、花乃が勢い良く席を立つと、私の肩を強く揺らしてきた。

「て〜ん〜かっ!起きてくだちゃ〜い、お昼の時間でちゅよ〜」

謎に赤ちゃん口調なのに腹が立つが、可愛いので許す。

私は机に伏せていた顔を上げて、花乃を見る。

「ずっと前から起きてるし」

ちょっとだけ反抗的になってしまった。

花乃は大きい目を糸のように細くし、満面の笑みで私を見つめる。花乃がこの顔を作ったときは、決まって何か企んでいるときだ。

「あのね、今日お金持ってなくてね、飲み物買えなくてね、それで…」

花乃のことは花乃よりわかってる。

私は保冷バックに入れていたカルピスを取り出す。

「これ。今日お金持ってなさそうだったから、花乃の分も買っといたよ」

花乃は太陽のように明るく笑い、私に礼を告げると強く抱きしめてきた。