「退屈そうだね」
「っ! 申し訳ありません」

 そうだった。今はクライド殿下とお茶をしている最中。
 パーティーとはいえ、婚約者候補に名を連ねていた私を、兄は公爵という地位を使って、無理やりクライド殿下と話をする機会を設けたのだ。
 まだ結婚もしていない兄に子どもはおらず。かといって、クライド殿下と年齢の近い妹を無視することはできなかったのだろう。

 私の結婚よりも、自分の結婚を考えればいいものを……と言えればいいが、それもまたできなかった。

 ファンドーリナ公爵を継げたことでも分かるように、兄は正当な生まれ。けれど私は……妾の子ども。それもメイドの子どもなのだ。

 運良く、クライド殿下が先にお生まれになってくれたお陰で、私はファンドーリナ公爵家に受け入れられたけれど……それでも義母には、よく思われていなかったのを知っている。

 このような場に呼ばれることも、すべて私がクライド殿下と婚約するためだった。公爵令嬢という肩書も、立場も。今着ているドレスさえも。