(きら)びやかなパーティー会場の中を、クライド殿下とミランダ嬢が歩いて行く。

 王太子殿下の隣で、さらにその腕を取るミランダ嬢の存在に、周りは怪訝な表情をしつつも、道を開けていた。
 おそらくここにいる者たちの中で、ミランダ嬢を知る者などいないだろう。けれど道を開けるのは、相手がクライド殿下であり、王太子だったからだ。

 さらにいうとクライド殿下は、婚約者である私を救うために、ケイティ王女様をファンドーリナ公爵家に送り込み、兄と義母の悪事を暴いたこと。そしてファンドーリナ公爵という地位にまで添えたのは、全てクライド殿下が、私を愛しているからやったこと。

 そう世間では言われている。いやそうなるように仕向けたのだ。ケイティ王女様の名を傷つけないための処置として。
 また、私がファンドーリナ公爵になる名目をでっち上げた、というわけである。

 それによって、クライド殿下の名声はうなぎ登り。婚約者を救った功労者として、人気を(はく)していた。

 けれどやってきたクライド殿下は、婚約者ではない女性をエスコートしている。それも婚約者である私の公爵拝命の祝いのパーティーで。

 私は臆せず、クライド殿下とミランダ嬢の前に出る。皆が開けてくれたお陰で、まるで舞台に立っているかのようだった。